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歌川広重『名所江戸百景 真乳山山谷堀夜景』
版元:魚屋栄吉 安政4年(1857)
満天の星空の下、提灯持ちに先導された一人の女性。対岸には闇に沈んだ待乳山と今戸橋。橋を渡ると安政2年の地震でつぶれた高名な料亭「玉庄」あるいは「金波楼」(広重「江戸高名会亭尽 今戸橋之図 玉庄(金波楼)」)の跡地に、新たに建てられた料亭「有明楼」の灯が見える。隅田川の川面にも星明りが映り、吉原に向かうのだろうか猪牙舟(ちょきぶね)や屋根舟が数多く浮かんでいる。提灯の紋は、当時流行していた紋切りの「のぞき紋」の一つであろか。一説に、この女性は地震からたった1年で料亭を建て、地震復興のシンボルとなった有明楼の女将(おかみ)お菊さんであるという。
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