歌川広重『東海道五十三次之内 日本橋　行烈振出』
版元：竹内孫八　天保４〜５年（1833-34）以降か

広重の出世作である保永堂（竹内孫八）版「東海道五十三次」シリーズ全55枚の最初の図「日本橋」は、初版では「朝の景」と題し、大名行列と早起きの魚売りたちと犬が2匹だけの構図であった。

東海道五拾三次　日本橋　朝之景（国立国会図書館藏）

おそらく初版のこの図が人気で増摺りを重ね、結果版木が摺り潰れ、本図は新たに版を興した再版（異版）であると考えられる。その折りに、多種多様な生業の人びとを描き込み、繁栄するお江戸日本橋を表したのであろう。江戸に多きものに「伊勢屋稲荷に犬の……」というがごとしの犬も、かわいい子犬と変化している。